AGA辞典 ーAGAに対処する物質・製品ー
フィナステリド
フィナステリドはもとは前立腺肥大症に対する治療薬として使用されていた薬でした。
その後、Ⅱ型5αリダクターゼの働きを抑制することからAGAに対しても有効であることが判明し、1998年にアメリカでAGA治療のための使用が始まりました。
フィナステリドを含有する薬としては、プロペシアが代表格です。
プロペシアは錠剤及び外用薬の形態があります。使用するためには、病院を受診して医師の処方を受けなければなりません。
デュタステリド
「デュタステリド」は、もともと前立腺肥大症のために開発された薬の有効成分として知られていました。
しかし近年、デュタステリドに5αリダクターゼを抑制する効果があることが認められ、世界中で注目を浴びています。
フィナステリドが「Ⅰ型」と「Ⅱ型」がある5αリダクターゼの「Ⅱ型」のみを阻害するのに対し、デュタステリドは両方を阻害します。
またⅡ型に対しても、デュタステリドはフィナステリドの約3倍の薬効があることがわかっています。
ザガーロ
デュタステリドを成分とする育毛剤です。
Ⅱ型だけではなくⅠ型にも効くので、プロペシアを服用して効果を感じられなかった方でもザガーロの服用でAGA治療に成功する可能性があります。
プロペシア
プロペシア®はフィナステリドを主成分とするAGA治療薬です。
日本では平成17年に認可されました。
錠剤として処方されます。
従来型のヘアケア方法がマッサージによって血行をよくしたり、皮脂の除去、栄養補給によって毛母細胞・毛乳頭の働きを活性化することに主眼を置いていたのに対し、プロペシアは5αリダクターゼの働きを抑制してDHTを減少させる化学的なアプローチを用いています。
肝機能に副作用を起こす可能性があるため、肝機能が低下している方は医師から服用を禁止される場合があります。
使用開始直後に初期脱毛と呼ばれる一時的な脱毛が起きる場合があります。
女性は使用できません。
フィンペシア
「フィンペシア」は、インドの製薬会社がフィナステリドを主成分として開発したAGA治療薬です。
プロペシアのジェネリック医薬品として紹介されることもあります。
エフペシア
「エフペシア」は、インドの製薬会社が開発した医薬品で、個人輸入によって入手することができます。
フィンペシアにかつて含まれていた「キノリンイエロー」という着色料に対して発がん性の指摘があり、これを用いない薬としてエフペシアが製造されました。
フィナロ
「フィナロ」もフィナステリドを主成分とした医薬品です。
インドのインタス社が製造・販売しており、個人輸入で安価に入手できます。
ミノキシジル
ミノキシジルは、1970年代からアメリカにおいて使用されてきた薬剤です。
元来は血圧降下剤として使用されていましたが、その後、多毛化の副作用が生じたことからAGA治療薬として研究・認可されました。
FDAがAGA治療薬として認可した初の薬剤です。
ミノキシジルを含む商品は、日本ではリアップが代表的です。
作用機序は解明されていませんが、毛母細胞に対して発毛を促す作用を有するとされています。
血管拡張の効果が頭皮に作用して血行が良くなり、毛母細胞が活性化するためと考えられています。
ミノキシジルのもう一つの作用として、毛周期を整え正常に近づけることが知られています。主に頭頂部で機能するとされています。
成長期の期間が伸張することで、毛髪の伸びが速くなり、太い毛髪が増える効果が期待できます。DHTの作用とちょうど真逆ですね。
代表的な副作用は頭皮のかゆみ・炎症・フケです。
また本来は高血圧治療薬ですから、低血圧の方は注意が必要です。頭痛、胸部痛や動悸など、循環器関連の副作用がある可能性もあります。
女性については、妊娠中や授乳期間を除いて使用することは可能です。
ロゲイン
「ロゲイン」は、アメリカのファイザー社が開発した外用薬タイプのAGA治療薬です。
ミノキシジルが5%含まれており、発毛促進の効果が謳われています。
ミノキシジルはもともと高血圧患者向けの経口薬として開発されましたが、使用した患者に副作用として発毛が起こることが判明し、AGA治療薬に使用されるようになりました。男女別・液状・泡状などの種類が豊富です。
実勢価格はプロペシアよりわずかに安いようです。
ケトコナゾール
ケトコナゾールは抗真菌薬です。
脱毛抑制の効果がいくつかの研究で明らかになっており、ケトナコゾール配合シャンプーがAGA治療の商品として発売されています。
発毛促進というよりも脱毛抑制の域にとどまるものなので、メインの対処法ではなく、多剤との併用によって効果を期待するべきものでしょう。
市販品ではコラージュフルフルというシャンプーがあり、ケトコナゾールと同種の抗真菌剤が配合されています。
AGA辞典 ー毛髪の健康に資する物質ー
ノコギリヤシ
北アメリカ大陸南東部に群生するヤシの一種です。
体臭の改善、前立腺肥大の改善やAGA対策への効能で知られており、古くから主に果実が用いられてきた植物です。
ノコギリヤシに含まれるβシトステロール、オクタコサノールは、5αリダクターゼの働きを抑制する機能があると言われています。 その他にはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが含まれています。
亜鉛
毛髪の主成分であるケラチンの合成に作用するミネラルです。
亜鉛が不足するとケラチンの結合が不十分となり、毛髪が弱くなってしまいます。
また、亜鉛は5αリダクターゼを抑制する作用もあると言われています。
牡蠣、レバー、牛肉、しじみなどに多く含まれます。
イソフラボン
エストロゲン(女性ホルモン)と極めて類似した構造であり、同じような振る舞いをします。そのため、5αリダクターゼのDHTへの変換を阻害すると言われています。
女性ホルモンと似た働きをするため、取り過ぎは女性化乳房や体毛の減少などの副作用があります。
豆乳、豆腐などに多く含まれます。
アロエ
アロエに含まれているアロインという成分が5αリダクターゼを阻害すると言われています。
原液を頭皮に塗ると効果があるようですが、肌に合わない場合もあるので使用する時には注意が必要です。
ミカン
d-リモネンという皮に含まれた成分に、5αリダクターゼを抑制する作用があると言われています。
AGA辞典 ー毛髪を作る細胞ー
毛乳頭
毛乳頭は、毛髪の「根」にあたる部分に存在する、いわば毛髪作りの司令塔のような細胞です。
頭皮の毛細血管から毛髪の材料を受け取って、これを毛母細胞に受け渡すと同時に、発毛や脱毛の指令を出しています。
毛乳頭に栄養素が届かなかったり、毛乳頭から細胞分裂を抑制ずる指令が出たりすると、毛母細胞は髪の成長を止めてしまいます。
毛母細胞
毛母細胞は毛髪を作る工場です。
毛乳頭から発毛の命令を受けて、細胞分裂して毛髪を作り出します。
二つに分裂した毛母細胞の一方が徐々に角質化し、頭皮表面に押し出されて毛髪となります。
毛乳頭から細胞分裂の命令を受け取ると、毛母細胞は、髪の材料となるアミノ酸や酸素などの栄養素を使って「内毛根鞘細胞」を生成し、毛髪を形作ります。
毛乳頭が毛細血管から運ばれてきたテストステロンを毛母細胞に受け渡すと、5αリダクターゼと結合して、DHTが生成され脱毛を促します。
髭などに対するレーザー脱毛処理は、この毛母細胞を破壊することで毛が新生されないようにするものです。
毛球部毛根鞘細胞
毛球部の一番下にある自家細胞。
毛球部の底部を鞘(さや)のように覆っている細胞です。頭文字をとって「DSCC」と呼ばれています。
毛球部毛根鞘細胞は毛包誘導能力(毛を作る能力)があることがわかっており、そこに資生堂が着目しています。資生堂は、この細胞を取り出して培養し頭皮へ戻し、健康な毛髪を育成するための研究を東京医科大学で行っています。
AGA用語集 ー脱毛に関係するホルモンー
目次
ジヒドロテストステロン
ジヒドロテストステロン(DHT)は、前立腺、睾丸、肝臓などにある物質です。
こいつがAGAの原因。悪者です。
「テストステロン」が「5αリダクターゼ」とくっつく(還元される)ことで生まれます。つまり
DHT=テストステロン+5αリダクターゼ
覚えておきましょう。
DHTは毛乳頭に運ばれていき、男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)と結びつき、髪にとって有害なタンパク質「TGF-β」を生み出します。
DHTは薄毛作用をもつTGF-βを生む
TGF-βは、髪を太く長くするための成長期を短くする物質です。TGF-βがあると、毛髪は十分に成長できず、細く短くなってしまうのです。
これを毛髪のミニチュア化と言ったりします。
さらに、毛母細胞のアポトーシス(自殺)をもたらすとも言われています。毛母細胞が死ねば、その毛穴から髪の毛が生えることは無くなります。
つまり、DHTがたくさんあると、AGAが進行しやすい状態にあるといえます。
また、たとえDHTの量が少なくても、DHTに反応しやすい方がいます。アンドロゲンレセプターの感受性が高ければ、もともとの体質としてAGAを発症しやすいといえるでしょう。
テストステロン
テストステロンとは、コレステロールを材料として作られる男性ホルモンの一種です。
テストステロン自体は悪者ではありません。行動力や筋力、動脈硬化の予防、性欲昂進などの作用があり、身体にとって必要不可欠な物質です。
5αリダクターゼと結合して、DHTへと変化してしまうとAGAになります。
したがって、テストステロンと5αリダクターゼとの結合を止める、これがAGA対策の要です。
テストステロンはドーパミンの分泌にも関与し、やる気や興奮をもたらします。例えば、射精後には穏やかになりますが、これはプロラクチンというホルモンが分泌されてテストステロンが急速に低下するためです。
テストステロンは殆どが精巣で作られ、成人男性は1日に約7mgのテストステロンを生成します。
20代をピークとして分泌量は徐々に低下していきます。
筋肉トレーニングによって筋繊維に刺激を与えることで、血中テストステロン濃度が高くなることがわかっています。
5αリダクターゼ
5αリダクターゼは、テストステロンと結びつき、ジヒドロテストステロン(DHT)へと変換する酵素です。
AGAを発生・進行させるのはDHTだと言われます。
そのため、5αリダクターゼを抑制したり、テストステロンとの結合を阻害することがAGA対策の一番の柱となります。
プロペシア(US版)1mgには5αリダクターゼを抑制する効果があると期待されています。
Ⅰ型とⅡ型がある
5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型があります。
Ⅱ型を作れない男性は、いつまでも頭髪がふさふさであることが知られています。
つまり、DHTを作り脱毛させるのは、Ⅱ型の方であると考えられます。
Ⅰ型とⅡ型の分布
Ⅰ型は頭の側頭部と後頭部、それから体の皮脂腺に多く存在しています。Ⅰ型の分泌量が多いほど油っぽい脂性肌になります。
Ⅱ型は前頭部から頭頂部に多く存在しています。また、毛乳頭に存在して髭や体毛の発毛・剛毛化を促します。
前頭部や頭頂部が薄くなった場合、Ⅱ型の影響である可能性が高いといえます。
5αリダクターゼの分泌量は個体差があります。
両親のいずれかが5αリダクターゼをたくさん分泌する体質であれば、子どもも分泌量が多くなる傾向にあります。優性遺伝だからです。
Ⅰ型の抑制には、亜鉛、ノコギリヤシ、タンニン、デュタステリド。 Ⅱ型の抑制には、アロエン、ノコギリヤシ、フィナステリドが効果を有すると期待されています。